お知らせ
お知らせ
神戸で出会った“人生最高のロッシーニ”──旅と美食の記憶
ひとり旅をするのが、昔から好きだった。
けれど今回の神戸は、少し特別だった。3年越しに再会する大学時代の友人と、思い出話を肴に、美味しいものを食べようと決めていたから。
「北野って、おしゃれなレストラン多いんだって」
そんな彼女の言葉に背中を押され、私たちは北野坂を登りはじめた。異国情緒漂う坂道と洋館の並ぶ街並みに、心が自然と弾む。
北野は観光スポットとして知られているけれど、実はグルメの街としても一級品。
歩けば、雑誌やSNSで見かけたようなカフェやレストランが点在している。カメラを向けたくなる景色と、香ばしいパンの匂い。どこかパリの街角を彷彿とさせるような空気感が、この街にはあった。
そんな中、友人が「ここ、気になってたの」と指差したのが、静かな住宅街に佇むひとつのレストラン──モダンフレンチの名店『VINSEMBLE(ヴァンサンブル)』だった。
予約もせずに飛び込んだ私たちに、スタッフは穏やかな笑顔で迎えてくれた。
店内はシックで落ち着きがあり、それでいてどこか温もりも感じられる。窓から差し込む光が、テーブルを柔らかく照らしていた。
メニューに目を通した瞬間、目が止まった。
「神戸牛フィレとフォアグラのロッシーニ 黒トリュフソース」
一瞬で心を奪われた。
神戸牛。フォアグラ。トリュフ。そして“ロッシーニ”という響き。
その全てが、私の中で“特別な夜”を予感させた。
運ばれてきたロッシーニは、一目見ただけで「これはただの料理ではない」とわかる存在感だった。
香ばしく焼かれた神戸牛のフィレ。その上にとろけるようなフォアグラ。
そして全体を包み込むように流れる、黒トリュフ香るソース。
ひと口食べると、言葉を失った。
牛肉の柔らかさとジューシーさ、フォアグラの濃厚さ、トリュフの香りが、舌の上でひとつに溶け合い、まるで音楽のように広がっていく。
「美味しい…」
その一言が、やっとのことで口からこぼれた。
オーナーソムリエが提案してくれたワインは、ブルゴーニュのピノ・ノワール。
華やかでありながら繊細な香りが、ロッシーニの重厚な味わいを見事に引き立てる。
「こういう時間って、人生のご褒美だよね」
友人とグラスを合わせながら、何度もそんな言葉を交わした。
話は尽きず、気がつけば空には神戸の夜景がきらめいていた。
帰り道、ふたりで坂を下りながら話した。
「また来たいね、絶対に」
“美味しい”を超えて、“心に残る”料理と出会ったあの夜。あのロッシーニは、きっと一生忘れない。
神戸という街がくれた最高の贈り物。
それは、異国情緒の中で味わう、五感で感じる美食の記憶だった。
和を感じるモダンフレンチと隠れ家ワインバー「VINSEMBLE(ヴァンサンブル)」
👉 https://www.kobe-vinsemble.com/vinsemble/
食べログ⇩