お知らせ
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「ねぇ、せっかくの結婚記念日なんだから、いつもと違うところに行かない?」——その一言が、今回の神戸旅行のきっかけだった。
私たち夫婦は、ワインには詳しくないけれど、ちょっと背伸びして“本物”に触れてみたい、そんな気持ちを抱えていた。神戸の北野エリアに、知る人ぞ知るワインバーがあると聞き、思い切って予約を入れた。「VINSEMBLE(ヴァンサンブル)」——その名前に、どこか音楽のような優雅さを感じたのを覚えている。
旅の始まりは、神戸の異人館街。坂道を登るたびに、風景がどんどん異国に染まっていく。不思議と懐かしく、異国の街を歩いているようで、日本を忘れそうになる。夕暮れの光が赤レンガの建物に差し込み、ノスタルジックな気分を誘う。そんな中、ひっそりと現れる洋館風のワインバー。扉を開けた瞬間、心がふっと軽くなった。
そこは、静謐で、どこか包まれるような空間だった。重厚なカウンターと奥に続くワインセラー。オーナーソムリエさんが私たちを優しく迎えてくれる。「ワインはお詳しいですか?」と聞かれ、素直に「初心者です」と答えると、「それなら、今日のコースに合わせて楽しくご案内しますよ」と微笑んでくれた。
最初に出てきた料理は、旬の野菜を使った一皿と、それにぴったり寄り添う白ワイン。「香りを一度楽しんでから、口に含んでみてください」と言われた通りにすると、なるほど、料理とワインが引き立て合うとはこういうことかと驚いた。ワインが料理を包み込み、料理がワインの味わいを際立たせる——そんな“共鳴”を感じる体験だった。
続いて出されたのは、厳選黒毛和牛のハンバーグ。肉の旨みとフォアグラの濃厚さ、トリュフソースの香りに、深みのある赤ワイン。これがまた素晴らしかった。普段なら1杯で満足する夫も、思わず「これ、もう一杯もらおうかな」と笑っていた。ワインの魅力に、ふたりして少しずつ引き込まれていくのがわかった。
「ワインは難しく考えなくていいんですよ。大切なのは、どんな時間を誰と過ごすかなんです」とソムリエさんが教えてくれる。私たちはうなずいた。この空間、この料理、この会話……そのすべてが、今夜だけの特別な時間を形づくっていた。
締めくくりのデザートとイタリアベルタ社のマジア。口に含むたび、大人の味わいに酔いしれる。グラッパってこんなにも多彩なんだと、驚きと感動が止まらなかった。
店を出たあと、北野の夜の街を歩いた。ライトアップされた異人館のシルエットが美しく、まるでヨーロッパの旅先のよう。静かな坂道で、私は夫にそっと言った。「来年も、またここに来たいね」
「うん、今度はもっとワインのこと、わかるようになっておきたいな」
神戸・北野の夜は、ワイン初心者の私たちに、味だけでなく人生の豊かさを教えてくれた——そんな旅だった。
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🟣 和を感じるモダンフレンチ&隠れ家ワインバー
▶ VINSEMBLE(ヴァンサンブル)
https://www.kobe-vinsemble.com/vinsemble/
五感で楽しむ上質なひとときを、神戸・北野で。